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顧客の声や熱量を事業成長の力に変える|すかいらーく「しゃぶ葉」のマーケティングの考え方とは

2023.11.06

この記事は、2023年6月2日に開催された「マーケターの集い」の課題解決ディスカッション企画のイベントレポートです。イベント全体のレポートはこちらからご覧ください。

顧客の声や熱量を事業成長の力に変える|すかいらーく「しゃぶ葉」のマーケティングの考え方とは

しゃぶ葉のファンコミュニティが新設!ノーコードでコミュニティを作れるcoorum(コーラム)を紹介

株式会社すかいらーくホールディングス マーケティング本部 (メニュー・プロモ統括) リーダー 岡田 智子 氏

すかいらーく 岡田氏|
株式会社すかいらーくホールディングス「しゃぶ葉」のメニュー開発・プロモーションチームのリーダーを務めている岡田と申します。

株式会社Asobica 事業推進室責任者 兼・セールス部 マネージャー 佐藤 頌太 氏

Asobica 佐藤氏|
株式会社Asobicaの佐藤と申します。私たちはファンコミュニティサービスの企業で、ぜひ皆様からしゃぶ葉様にお力を貸していただければ幸いです。

すかいらーく 岡田氏|
しゃぶ葉の店舗は全国に広がっており、首都圏にも120店舗とそれなりに出店しております。

Asobica 佐藤氏|
私も中高生の頃から、学校行事などの打ち上げでしゃぶ葉様のお店に行くのがとても楽しみでした。

弊社はcoorum(コーラム)という、ノーコードでコミュニティを作れるサービスを提供しています。ミッションは「遊びのような熱狂で、世界を彩る」で、特に「顧客体験を彩りたい」と願って事業展開しています。

以前は「toC」のサービスを手がけていたのですが、周りを見渡すと今は洋服も靴も、何でも企業が提供してくれる時代なので、私たちは「世界中を彩るためには、各企業が顧客体験を彩れるような仕組みを提供したい」と考え、企業とお客様がつながるようなコミュニティの考え方を提案しています。

ロイヤル顧客プラットフォーム「コーラム」

事例としては江崎グリコ様のポッキーや、カインズ様のDIYなどのコミュニティをご支援させていただいております。

すかいらーく「しゃぶ葉」とその課題を紹介

Asobica 佐藤氏|
すかいらーく様は岡田さんをはじめ、コロナ禍などの大変な状況の中で奮闘されていて、かねがね「お客様の力を借りてアイデアを作っていきたい」、そして「作ったアイデアが本当に刺さるかどうかをお客様と一緒に考えていきたい」とおっしゃっています。

ただ、いざ実際に広めようと思っても、予算には自ずと限りがありますので、何とか工夫してお客様と一緒に広めていきたいという事情もあります。

すかいらーく 岡田氏|
しゃぶ葉のコミュニティは、まさにこの6月のローンチになります。

Asobica 佐藤氏|
ファンコミュニティ自体はとても流行っているのですが、未だ「コミュニティって何?本当に儲かるの?」というイメージ止まりの方も多いのが実情ですので、今回はすかいらーく様と、しっかり考え方のヒントを提供していけたらと思っています。

実際、「最近よく聞くし、ファンが大事な存在であることはわかる。だが、コミュニティに大きなリソースを割いて、果たして成果は出るのだろうか?」という声をよく聞きます。本セッションでは「#岡田さんを救いたい」を合言葉に、たくさんのアイデアを共有できたらと思います。

すかいらーく 岡田氏|
実は私、週末は副業でリンパケアの施術をしていて、夢は「ゴッドハンド」のセラピストになることなのですが、ボディーワークは飲食業と重なる部分が多く、お客様の健康を作り、心を楽にするちょっとした幸せを生み出せる直接的なサービスに興味を持っており、本業とリンクすることも多いと感じています。

私自身、学生時代からとにかく「食」が大好きで、「食べること」と「幸せ」という感覚がビジョンとして体に染みついています。特別な食ではなく日常の食の中で、ちょっとした幸せや「いいね」を生み出しながら共振を起こしていきたいです。

株式会社すかいらーくホールディングス マーケティング本部 (メニュー・プロモ統括) リーダー 岡田 智子 氏 と 株式会社Asobica 事業推進室責任者 兼・セールス部 マネージャー 佐藤 頌太 氏

弊社すかいらーくは創業53年の老舗企業で、創業当初から「価値ある豊かさの創造」という経営理念を掲げてきました。当時はまだモータリゼーションの走りの時代でしたから、日本における外食産業の草分け的な存在として業界をリードしてきました。

また、ミッションは「ひとりでも多くのお客様に、安くておいしい料理を、気持ちの良いサービスで、快適な空間で味わっていただく」で、特に「安くておいしい」ということが弊社の特徴だと考えています。

グループ内にはさまざまな業態を擁し、ライフスタイルの変化に応じて、さらに新しい業態を出し続ける取り組みを継続していて、今年新たに2ブランドがオープンしました。

まず、「ガテン系めし」の業態で、主にロードサイドに出店している蕎麦と丼のブランド「八郎そば」です。

もう一つは、「飲茶食べ放題」かつ「ハレの日」の意味を持たせた業態を目指し、「バーミヤン」で培った開発の強みを活かした新ブランド「桃菜(とうさい)」です。今後、年内に10店舗ほど展開していく予定です。

さて、本セッションで主に取り上げる「しゃぶ葉」は「しゃぶしゃぶ食べ放題」のブランドです。売りとしては、美味しいお肉と新鮮な野菜はもちろん種類豊富なだし・たれ・薬味、ワッフルやソフトクリームなどが作れるデザートバーがあり、お客様次第でさまざまな味わい方やいろいろな楽しみ方ができるお店であることを特徴にしています。

当ブランドが始まったのは2007年で現在、国内に278店舗を展開しており、現在も新規の出店も続けている状態です。

しゃぶ葉の紹介(ブランド紹介)

「しゃぶ葉」の4大ポイントとして「超コスパ!」、「選べる!」、「うまい!」、「楽しい!」を挙げました。まず、コスパがいいことで認知を取りたいと考え、そのための商品設計をしています。

次の「選べる!」は、豊富なメニューを選べる楽しさを打ち出すことを狙って開発・展開しています。また「うまい!」ということは当然で、安くありながらうまいものを、仕入れの段階からいかに引き出すかを私自身注力しています。

そして「楽しい!」の要素について、ここでコミュニティの力を借りながら、どんどん多様な価値づけを増やしていけたらと考えています。

すかいらーく「しゃぶ葉」など外食産業へのコロナ禍の影響

Asobica 佐藤氏|
外食産業はコロナ禍の影響が大きかったですよね。

すかいらーく 岡田氏|
2019〜2023年4月の日当たりの平均客数の推移を見ると、皆様ご存知の通り、2020年2月に日本にコロナが入ってきて、行動制限が始まった3月頃が一番影響が大きかったです。

当時は、コロナ禍で一般の消費者の生活がどのように変化するのか、感染したときの影響などもわからないことだらけでした。行動制限に加え、「外に出るのが怖い」という心理も重なり急落したという状況が続き、その後も第2波〜第8波とコロナ感染者が増えるのと反比例して客数が減少していました。

今年の5月に行動制限が解除され、新型コロナの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行するとの報道もあって、3〜4月にやや持ち直したのに続き、5月も戻り基調が継続しています。

ただ、残念ながらコロナ禍前の2019年の平均値よりはまだ低い状態にとどまっています。

一番影響が大きかった2020年3月頃にはジョナサンのブランドリーダーを務めていたのですが、「新メニューは一切ローンチしない」ということで開発が止まってしまったため、開発専任だった私の仕事がなくなってしまいました。

その後、組織改訂を経て、今年の2月まではバーミヤン、ステーキガストを含む4ブランドのプロモーションを担当する形で、プロモーションチームに移っておりました。

その間はとにかく施策を絞り込んで守りを固めることと社内体制をスリム化し筋肉質な組織に変革していく一方、経営判断として「この期間に生産性を上げるためのDX化に取り組もう」という大きな方針が示されたので、とにかくコツコツやるべきことに取り組んでいました。

やはりお客様に対して「イートインに来てください」といえない状況でしたので、その代わりにテイクアウトを充実させたり、宅配チャネルを増やしたりしていました。

また、コロナとは別の切り口ですが、インフレの影響を受けている業界も少なくないと思います。特に外食は食材価格をはじめ、水光熱費・人件費などもそれぞれ上がり続けている状況です。

この1年くらいは各社とも価格の見直しに踏み切っており、弊社も去年、大きくは2回価格改定(プライシング)をさせていただきました。

総日商や日客、イートインの客単価などの数字を並べると、プライシングをしたことによって、2023年4月の売り上げ自体は2019年の数字に近づいてきています。

ただ、お客様の数は2019年の84%ほどにとどまっており、戻り切れていない状況が続いています。

Asobica 佐藤氏|
コロナ禍では外食の位置付けが「特別化」するといいますか、「せっかく外に出たし、何か食べていこうか?」と思ったときに、どれだけ選ばれるブランドになるかが重要ですね。

すかいらーく 岡田氏|
はい。コロナ禍にプロモーションを担当し、従来のファミリーレストラン業態は積極的な理由で選ばれる機会が弱まっているのを実感しました。今まで「店舗が生活動線の中にあるから」という消極的理由で来ていただいていた方が、コロナの影響で生活動線自体が変わってしまい、再び外食自体が目的化されるようにならない限り、戻って来ていただけないという状況に今直面しています。

私は開発とプロモーションの担当なので、しゃぶ葉をその両軸で見てみると、第一のターゲットとしてお子様を含むファミリー向けのお客様と向き合っており、それ以外では10〜20代の学生さんが厚いお客様層になっています。

株式会社すかいらーくホールディングス マーケティング本部 (メニュー・プロモ統括) リーダー 岡田 智子 氏 と 株式会社Asobica 事業推進室責任者 兼・セールス部 マネージャー 佐藤 頌太 氏

今回プライシングを行うに当たり、プロモーションと絡めどのような戦略を採ったかというと、「値上げはするが、家族のお財布の負担になり過ぎないよう、60歳以上の食が細い人向けの価格帯を下げることと、お子様連れが来やすいよう小学生は高いコースも含め、どのコースでも一律999円にしたこと。そして、小学生未満のお子様は全て無料にさせていただいたことが実施事例になります。

そのほか、割引ではなくちょっとした楽しい思い出につながるようなプレゼントを差し上げる施策を行ったり、また好評の「自分で組み立てるデザート」という体験を横に広げ、自分で好きなゼリーが作れる「ドリンクdeゼリー」や、野菜で包むサムギョプサル風の「しゃぶギョプサル」などをメニューとして導入しました。

このような見せ方をすることで、「やってみたい」という気持ちを起こさせることを考えました。

また、スポットのキャンペーンとしては、父の日は「お父さんありがとう」ということで飲み放題をその期間だけ安くしたり、愛飲家の需要に応えて宴会専用コースを作ったり、それからネコ型配膳ロボットが全店に配置されたタイミングで、「#ネコロボみっけ」のハッシュタグでUGC(User Generated Content|ユーザー生成コンテンツ)を獲得する施策などを打ちました。

さらに直近でいうと、コロナが5類に移行したタイミングで、いよいよ守りから攻めに転じるということで、5月から本格的なフェアメニューとして牛たんしゃぶしゃぶを発売しました。

それに合わせて初夏を満喫する「レモンハーブだし」と、コカ・コーラ様の「檸檬堂」とコラボしようということで「檸檬堂サワー」キャンペーンを実施するという組み合わせで販売したところ、予測の360%の売り上げを達成しました。

Asobica 佐藤氏|
素晴らしいですね。

すかいらーく 岡田氏|
うれしい悲鳴なのですが、予測が甘かったという反省もあります。少し前までの発注時点の見立てとしては妥当な線だと思ったのですが、ここでやはり「風向きが変わっている」ということを実感したので、今後やるべきことを早急に見つけていけたらと考えています。

所属先は必ず売上アップ!敏腕マーケター岡田氏が抱えるミッションとは

株式会社すかいらーくホールディングス マーケティング本部 (メニュー・プロモ統括) リーダー 岡田 智子 氏 と 株式会社Asobica 事業推進室責任者 兼・セールス部 マネージャー 佐藤 頌太 氏

Asobica 佐藤氏|
岡田さんのミッションについても教えてください。

すかいらーく 岡田氏|
私自身のミッションは「しゃぶ葉ブランドの年間売上総利益を予算達成する」という一言に尽きるのですが、具体的な目標としてはユニット別・セグメント別・組人数別などのお客様を分析し、それをどう設計していくかということがメインになってきます。

また客単価に関しては単品売価やその組み合わせによるメニューミックス、時間帯別の価格を選択して単価を組み立てることなどが必要です。そして、粗利率に関してはインフレにどう対応するかが主眼となります。

あとは、弊社にとって生産性の問題が結構大きく、店舗のちょっとした一つの作業が積み上がると、全体で何千万も違ってくるということもあります。そうすると収益性が変わるので、オペレーション設計が非常に重要になり、しっかり考慮していくといったあたりでしょうか。

Asobica 佐藤氏|
岡田さんは普段、どのような一日を過ごされているのでしょうか。

すかいらーく 岡田氏|
関連するチームや人の数が多いので、やはり日中はどうしても社内の打ち合わせや会議に終始していますが、そのほかの時間では例えば、私自身もチラシやLPの原稿を書いたり、アプリプッシュの文言を考えたりしています。そうした作業関係は朝と夜の時間に集中してやっていますね。

Asobica 佐藤氏|
確かチームはお二人でしたっけ?

すかいらーく 岡田氏|
純粋なチーム編成としては二人ですが、ただ複数のチームと横串で動いているので、デジタルマーケ、開発、購買・買い付けチーム、営業担当などさまざまなチームと連携を取りながら進めています。

そういう意味で、純粋に企画だけを行うプランニングのメンバーは二人ですが、一緒に動いている人数全体はかなり多いです。

Asobica 佐藤氏|
しゃぶ葉の売り上げは、すかいらーく全体でガストに次いで二番目ですよね?

すかいらーく 岡田氏|
昨年まではバーミヤンに次いで3番手だったのですが、おかげさまで順調に出店が進み、今回のプライシングも結構うまくいったため、好事例といってよいかと思います。

お客様の数を増やしながらプライシングもできているということで、売り上げ自体もグループ全体で二番目に上がってきています。

「しゃぶ葉」がファンコミュニティを導入した理由は? −過去のデータが参照できない時代に

コミュニティ施策を実行した背景

Asobica 佐藤氏|
さて、コミュニティ自体は耳にして知っているが、コミュニティのメリットを説明できないという方も多いと思います。弊社がすかいらーく様にコミュニティ施策を導入した理由についてセールスリサーチさせていただいたものがあり、結構共感いただける内容ではないかと思いますので、ご共有をお願いします。

すかいらーく 岡田氏|
コミュニティ施策が有効ではないかと考え始めたきっかけというのをまとめてみました。私はデータ分析が好きで、これまで過去との差分を見ながら課題を見つけ、それに対してアプローチする行動スタイルを取ってきたのですが、コロナ禍以降は以前のデータが無効化され、そこから得られるものが何もない状態になってしまいました。

Asobica 佐藤氏|
生活様式が根本から変わってしまいましたからね。

すかいらーく 岡田氏|
「そこを見て仕事をしていたら失敗する」ということがわかってしまった。

それから、先が見えない中で何とか打ち手を繰り出しながら光明を見つけていくため、PDCAサイクルを早め、いかに「アタリ」と「ハズレ」を見つけ的確な施策を打っていくかを考えることが必要だと感じました。

そして、実感としてマス広告の影響力が弱まったというか、どうしてもチャネルが増えている影響で、以前のようにマス広告一本でいくにはその影響力が低減しており、その傍ら、SNSの活用がうまくできていなかった部分もありましたので、そこも「しっかり活用していかなければ」という課題感がありました。

Asobica 佐藤氏|
予算が縮小することもあり、失敗が許されない中参考にしたかった過去の成功事例が、コロナなどによって全く違う環境に変わってしまったせいで参照できないというジレンマですね。

そのように、過去のデータが参考にならない中でも、「今の状況はどうなのか」、「その先でどういう体験が求められているのか」などを検討していかねばなりません。

そのとき誰の声を聞けばいいかというと、それはやはり今来てくれている顧客の声だと思いますし、さらに中長期的な視点では、日本の人口はどんどん減っているので、今ついてくれているロイヤルのお客様を絶対手放してはいけません。

いわばロイヤル顧客の声を聞きつつ、「良いアイデアが出た」と思っても企業がひとりで広げるのではなくお客様と一緒に広めていける、またそのためのUGCを作り出せる装置がコミュニティなのだと思います。

すかいらーく 岡田氏|
実は去年、コミュニティサイトに興味を持ち始めてから自分なりに調べていて、3社ほどからお話をうかがったのですが、その中に佐藤さんのプレゼンもあって何度かセッションさせていただいた結果、最後の最後は佐藤さんの熱量の高さや「何とかしてしゃぶ葉を盛り上げていきたい」という熱量の高さからcoorumに決めました。

ただ、それだけではなく私自身にとっても新しい経験になるので、「一緒に課題解決をしていただける仲間が欲しい」と思ったことも大きいです。つまり私としゃぶ葉の課題解決・成功が佐藤さんの課題解決・成功になるということです。

そういう関係性を作れる企業さんと一緒にしたいと思っていたとき、その可能性を一番強く感じさせてくれたことも決め手の一つでした。

それから、システムの部分の開発が不要で、ノーコードで自由度高くメニューが組めることや、顧客分析が標準機能として可能なため、追加予算がかからないことも魅力でした。

しゃぶ葉が解決しないといけないこと

Asobica 佐藤氏|
安心してサービスを任せていただくため、「どういう理由でロイヤル顧客になったのかがわかる」ことがcoorumの強みです。何となく「盛り上がりました」、「売り上げが上がった」というだけでは、結局次はどうするのかという話に戻ってしまいますから、弊社は分析に関してはこだわっています。

さまざまに生活様式が変わりゆく中、今そして未来に必要な顧客体験のアイデアを作りたい。

また、そのアイデアの効果について素早くアジャイル的にPDCAを回していきたい。

そしてアイデアを広めるときに、アンバサダーとまではいかずともお客様の力を借り、その声や熱量を事業の推進力に変えたい、というのが岡田さんや私の思いです。

株式会社すかいらーくホールディングス マーケティング本部 (メニュー・プロモ統括) リーダー 岡田 智子 氏 と 株式会社Asobica 事業推進室責任者 兼・セールス部 マネージャー 佐藤 頌太 氏

改めてコミュニティのメリットについてまとめると、なかなか過去の実績は参考にならず、デモグラデータでも顧客体験がわからないため、結局予算も少ない中、企業が独自で考えるしかないといった諸課題を、顧客を起点に解決していくことになります。

すかいらーく 岡田氏|
「過去の実績が通用しない」と痛感した事例がありました。弊社には過去との差分を見るという文化があり、しゃぶ葉は元々学生さんなど若い人向けの業態で、もっと成熟した大人・シニアの方はちょっといづらい環境だろうとは自覚しています。

ですから正直、シニアの方向けの業態ではないという認識だったのですが、コロナ禍が始まったときに起きた現象は、比較的ワクチン接種が早く済んだシニア層の、かつ行動様式が変わらない方々がお客様として残って、それ以外の客層が減るという意外なものでした。

この結果、社内でシニアが高評価になり、「シニアの方が残っているのだから、シニア向けの施策を打つべきだ」という示唆出しをされました。

Asobica 佐藤氏|
「積極的にシニアを呼ぼう」ということですか?

すかいらーく 岡田氏|
はい。そのような示唆出しをされたのですが、私はそれにはさすがに同意できず、「単純に過去の実績から学び取ることだけに着目するような企業文化から脱却しなければいけない」という課題意識が生まれました。

Asobica 佐藤氏|
象徴的なエピソードです。持続的にファンとつながることと、そもそも助けてくれるお客様を増やすことの二つに一生懸命取り組みつつ、コミュニティのオープンに向け現在準備を進めているわけですね。

今岡田さんが欲しているのが、これまでパーツとして欠けていた、継続的に深い交流が顧客と取れる設計です。

コミュニティを起点に「しゃぶ葉」を愛されるブランドに!

おやさい学校 しゃぶしゃ部(仮)

Asobica 佐藤氏|
テーブルディスカッションのテーマは「外部要因に左右されない売上増加」ですが、コミュニティの名称案や思いについて聞かせてください。

すかいらーく 岡田氏|
元々、公式Twitterで「しゃぶしゃ部」というハッシュタグで情報発信や交流を行っており、結構熱量の高いユーザーの方々に活動していただいています。

ただ、「その人たちが集まる場所がないな」と思っており、「そのような場所を作りたい」という背景が動機の一つです。

また、しゃぶ葉ではお野菜をたっぷり食べていただけますので、お肉ではなく「おやさい」と付け、コミュニティ名は現在、「おやさい学校 しゃぶしゃ部」(仮)というものを考えております。

株式会社すかいらーくホールディングス マーケティング本部 (メニュー・プロモ統括) リーダー 岡田 智子 氏 と 株式会社Asobica 事業推進室責任者 兼・セールス部 マネージャー 佐藤 頌太 氏

コミュニティには、それが成り立つ条件があります。コミュニティは参加型の場所・メディアなので、企業が「売上を上げたい」ということだけを前面に出してしまうと、ユーザーのアクティブ率は上がりません。

反対にお客様の満足だけを追求すると、コミュニティ自体は盛り上がっていても儲からない状況が生まれてしまいますから、コミュニティが力を発揮できる、お客様と企業双方の満足が重なる部分が何かを考えることが重要です。

すかいらーく 岡田氏|
外食産業と一口にいってもさまざまな業態があり、弊社のようなファミリーレストランとそうでない企業で異なる部分ももちろんあります。

ただ、全体観としてはそもそも外食に出かける人口自体が減っているともいわれており、また現在は多様なサービスが進化していろいろなチャネル・開発品が増え、家でも十分に充実した食を楽しむことができるようになってきており、概して厳しい環境にあるといえそうです。

しゃぶ葉にアドバイスください選手権 by マーケターの集い

そんな中、「おやさい学校 しゃぶしゃ部」にかける私の思いは、このコミュニティを起点にブランドを「愛してほしい」ということです。

しゃぶ葉を愛されるブランドとして育てながら事業成長していきたい。そこで、ぜひ皆様にもお知恵をお借りしながら、顧客を惹きつけてやまないブランドにしていけたらと思っています。

ついては、その起点となるものをコミュニティの中に生み出したいという狙いがあり、お客様が抱える背景を知り、新しいアイデアの発信源・震源地にしていきたいと思っております。

Asobica 佐藤氏|
コミュニティ施策は運用型広告と要領が重なるところも多く、そのときのユーザーの需要にはまったものを出しつつ、時間が経てば飽きられるし、人数が増えればニーズが変わるといった部分をチューニングしていくため、アイデアはもういくらでも欲しい状況です。

今日のワークショップ上で、ご参加の皆様には以下のテーマでディスカッション/ご提案いただけたらと思います。

  • ロイヤル顧客を増やすアイデア(ロイヤル顧客の定義:年4回以上来店を3年間継続)
  • しゃぶ葉をおすすめしてくれるUGC(口コミ)を増やすアイデア(UGC = 推奨者 × 平均発話数)
  • コミュニティを盛り上げるアイデア(活性化につながる/ファンを喜ばせる)

すかいらーく 岡田氏|
それでは、どうぞよろしくお願いします。

ディスカッションパート

講演後、参加者たちはファンコミュニティを活性化する戦略を考え、熱量高く議論を交わし、すかいらーく様向けブランドマーケティング施策に関するさまざまなアイデアをまとめてゆきました。

ディスカッションパート

30代の参加者が多かったあるテーブルでは、次のような流れでディスカッションが行われていたので見てみましょう。

【課題の洗い出し】

チームメンバーがちょうど先週、実際にしゃぶ葉に行ったばかり!というあるチームのディスカッションの流れです。

ユーザー層の幅が狭い
 ↓
学生が大勢で行って騒いでいるイメージがある
 ↓
大人向け、静かに食べるイメージが弱い
 ↓
空間の雰囲気を変えれば良いのではないか?

しゃぶ葉に行くことがSNSをあげるきっかけになると良いのでは?
 ↓
そこに行っていることだけを投稿するのは恥ずかしい
 ↓
投稿したくなる場を提供するためには何をすれば良いのか?

【出てきたアイデア】

ユーザー層の幅が狭いという課題に対しては、

  • 若者が大勢で集まる機会は年に数回しかないので、その数回に来てもらうイベントとしてクラブみたいな雰囲気を作る
  • 店内で静かなスペースと騒げるスペースと分ける
  • 「おやさい学校 しゃぶしゃ部」に掛けたアイディアで施策をしたい

しゃぶ葉に行くことがSNSをあげるきっかけになるために、

  • スープの種類が多いことが特徴ということで、スープを自分で作ってお勧めを投稿できる施策
  • 店舗ごとにお勧めスープを投稿し、その投稿にイイね!を押してもらい参加型の施策にする

【あるテーブルでの結論】

ユーザー層の幅が狭いという課題に対しては、

  • 一人しゃぶしゃぶが出来る場を作り、大勢の場所と切り分けして若い世代以外も通いやすくする
    • おやさい学校 しゃぶしゃ部にかけて「自主練」という位置づけ
  • 一人しゃぶしゃぶの場はあまりないので、できるようになったら需要があると思う
  • 頻度高く通うことになったとしても、色々なスープを楽しめるので飽きない

しゃぶ葉に行くことがSNSをあげるきっかけになるために、

  • 一人しゃぶしゃぶをしている方がコメント投稿できる場、及び参加している人数をリアルタイムで確認できる
    • リアルタイムの参加者が一人になった場合、人数多かった場合もその画面をスクショして投稿したくなる
  • 一人で行っていてもSNS上で他の方と繋がれる、参加人数が少なすぎても逆に自慢したくなる

このような形で、各グループでのディスカッションが全テーブルで実施されており、改めて、業種も業界も立場も考え方も違うマーケターが一緒に戦略を考える機会というのは大変貴重だと、筆者は強く感じました。

各グループのアイデアは一旦事務局へ渡され、それをすかいらーく 岡田氏がすべてチェックの上、懇親会の席で優秀賞が発表されました。

優秀賞受賞チーム

【株式会社すかいらーくホールディングス 岡田氏のコメント】

今回はしゃぶ葉の現状の立ち位置や課題についてお話しさせて頂きました。今回のコミュニティ施策でも、一番は「ファミリー層」のお客様をいかにファン化しロイヤル顧客になって頂くか、という命題を抱えておりますが、皆さん、さすが優秀なマーケターの集まりで、短い時間で的確に課題を捉えて、想像以上に集中し白熱したディスカッションが展開されていました。

本当にその光景だけでも感銘を受けましたが、その中で、優秀賞に選ばせて頂いたチームは、「しゃぶ葉はお子様が苦手な野菜をはじめて攻略する場所である」というコンセプトを立てて、楽しく攻略する方法を具体的に挙げて頂いたところに、社会貢献としての意義も感じられて、有難くも素敵なアイデアを頂戴したと最高の評価を贈らせていただきました。

【株式会社Asobica 佐藤氏のコメント】

今回はファンやロイヤル顧客を増やすためにどうしたらいいのか、そのなかでコミュニティにどのような価値があるのかというお話をさせていただきました。

皆さんからよく「コミュニティに興味はある」というお話を伺うことが多いですが、実際コミュニティを構築することでどんなメリットがあるのか、どうやって推進していくのかを
ワークショップ上で考えていただくことができ非常に良かったと考えています。

ワークショップの中で皆さん熱い議論を交わして、私達が想像していなかったようなアイデアが出てきたり、課題から解決まで筋が通った意見ばかりだったので選ぶのが非常に難しかったです。その中でしゃぶ葉の目指していきたいコンセプト上にありつつ、エンドユーザーが楽しく参加することができ、かつ事業貢献に繋がりそうな素敵なアイデアを1番とさせていただきました。

今回のセッションはやって終わりではなく、みなさんがそれぞれの業務に戻った際に活かすことができて、はじめてやってよかったと言えるセッションだと思います。

皆さんの事業の一助となれば幸いです。

関連リンク

しゃぶ葉 – すかいらーくグループ
coorum(コーラム) | ロイヤル顧客プラットフォーム

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